さくらの花が舞う頃に




「いえいえ、ああやって騒げるのも高校生までですからね。とても楽しそうで羨ましいですよ」



フロントスタッフの方がにこやかにそう言った。



「今夜は吹雪になりそうだなあ」



そうひとりごとを言って、そのフロントスタッフは鼻歌を歌いながら去って行った。




俺から見れば、鼻歌歌ってるあのフロントスタッフも楽しそうで羨ましいんだけど。



心の中でそうツッコミを入れてみる。



ていうか、今夜は吹雪になりそうって言ってたよな。



今日は学年主任に何言われてもぜってー外出ないし。



寒がりな俺が、そんなわけのわからない意思を固めていたときだった。





「………へー、今日は金魚のフンみたいにくっついてくる彼女いないんだー」




人を軽蔑するような、冷めた声が背後から聞こえた。



振り向くと、そこには蔑むような目を俺に向けた戸山の姿。





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