大人の恋は波乱だらけ!?
「……悪かった。みっともねぇ所を見せちまって」


暫くして、私たちはテーブルに向かい合って座っていた。
まだご飯の途中だった為、再開する事になったのだが、もうすっかりと冷めきっていた。


「みっともなくなんかないですよ。
寧ろ嬉しいです、昴さんの心に近づけた気がして」

「何だそれ」


鼻で笑う昴さんだがどこか優しさがあった。
彼の目は真っ赤に染まり、少し腫れているが今まで見てきたどんな表情より輝いて見える。


「もう無理はしないで下さいね?
あと、あまり頑張り過ぎないで下さい!
感情がコントロールできなくなるほど溜め込むのは禁止です!体に毒ですから!」


私が言えば昴さんは思いっきり顔を歪めて私を睨みつける。


「それはお前だろーが」

「うっ……」


そう言えば私も彼の前で、壊れたように泣きじゃくった事があった。
すっかり忘れていた私は気まずさから言葉を失くしてしまう。
それを誤魔化すようにハンバーグを口に詰め込んだ。


「ったく、言い返せなくなったらダンマリか。つくづくガキだな」


思いっきり私を馬鹿にする昴さんは、さっき私の腕で泣いていた人と同じ人間なのか疑いたくなる。
今の昴さんからは全く弱々しさを感じない。
すっかりと元に戻った彼にタメ息が出そうになるが、やはり彼はこうでないと。
そういった想いが強くなっていく。
昴さんに涙なんか似合わない。
人を馬鹿にするくらいがちょうどいいのだ。


「そんな事言ってるとケーキあげませんからね?」

「は?なんだよそれ!?」

「私が2つ食べます!」

「……太るぞ」

「なっ……別にいいです!もう絶対にあげません!」


私がケーキの箱を取り上げれば昴さんは慌てたように立ち上がる。


「わ、悪かった謝るから!な?」

「……」

「おい」

「じゃあスペシャルショート譲って下さい!」


ニコッと笑いながら言えば彼はオデコに青筋を浮かべた。


「それとこれは話が別だ!!」

「駄目です!」

「今はショートの気分なんだよ!」

「私だってそうですよ!」


2人でじゃれ合いながらケーキの箱を奪い合う。
昴さんに渡すまいと隠しながらある事を思いつく。


「じゃあ2つとも半分こしましょうか!」

「ああ、それなら2つとも楽しめるな……!」


私の提案に目を輝かせながら昴さんは頷いた。
彼のケーキ好きには本当に敵わない。
そう思いながら私たちは仲良くケーキを半分こにする事にした。

いつの間にか私たちの間から気まずさはすっかりと消え去っていた。
元通り、いや前よりもずっといい関係になっただろう。
目には見えないが私たちの間に信頼という絆が出来たように感じた。
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