大人の恋は波乱だらけ!?
「……葉月……」


ポツリと呟かれたのは私の名前だった。


「昴さ……」

「もう……訳分からねぇよ……何なんだよっ……」


バンともう1度壁を叩く彼。

その拳は小刻みに震えていた。

声だって、体だって。

昴さんの全部が震えているんだ。


「昴さん……大丈夫ですか……?」


放って置けなくて彼の腕に触れたけれど。


「触るなっ!!」

「あっ……」


その手は簡単に払われてしまう。

パシリと虚しい音を立てながら、手が昴さんから離れていく。


「お前と居ると……自分が自分でなくなる……」

「昴さん……」


彼は何も言わずに玄関から出て行った。

扉が閉まる音がいやに大きく聞こえた。

私たちの間には見えない溝が生まれた気がしたんだ。
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