大人の恋は波乱だらけ！？
顎を掴まれクイッと上に向かされる。
顔を上げれば高梨部長と視線が交じり合った。
真っ直ぐで優しい瞳が私を捕えて離してくれなかった。


「お前は頑張りすぎだ。少し肩の力を抜いたらどうだ？」

「でも……社長や他の社員の方……高梨部長の役に立ちたいんです」


私は普通の社員と違ってシナリオを書く事が主な仕事だ。
他の新人社員が通って来た道とはまた違う道を歩んできた。
そのせいか私はあの会社に居場所がないように思えて仕方がないんだ。

勿論、社員の人たちはそんな事を思っていない。
私を仲間だと思って仲良くしてくれている。
でも自信がない。
私もあの会社の社員だって胸を張って言えない自分がいる。


「……桜木」

「……はい」


高梨部長の手が私から離れる。
さっきまで優しかった高梨部長の目が真剣なモノへと変わっていた。
緊張しつつ返事をすれば高梨部長は声のトーンを落とした。


「お前は誰の為にシナリオを描いているんだ？」

「え……」

「社長の為か？社員の為か？俺の為か？」


誰の為に……？
迷う私に高梨部長はハッキリと言い放った。


「違うだろうが。
お前のゲームを楽しみに待ってくれている人たちの為だろう？」


高梨部長の言葉にハッとした様に目を見開いた。

私は馬鹿だ。
このゲームは会社の為に作っているモノじゃない。

ゲームを利用してくれる消費者の為に私はシナリオを描いているんだ。
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