雪国ラプソディー

「浅見って、今何年目?」


私に興味があるという感じではなく、ただなんとなくという方がしっくりくる聞き方だった。料理が来るまで手持ちぶさたな私もおしぼりを手に取って、向かいに座っている小林さんを見た。


「3年目です」

「おっ、近い!浅見さん、僕4年目」


村山さんは、ひとつ違いだね、と、とびきりのスマイルをくれた。
私はうまく笑顔を返せずに、考えてしまう。

すごいなあ。
村山さんは私と社歴がひとつしか違わないのに、あんなに大きな仕事を任されているんだ。

自分の普段の仕事内容を振り返って、もやもやした気分になった。


「3年目か。あの写真は、入社直後?」


写真とは、社員名簿のことだろう。小林さんは、私と会う前に確認したと言っていたから。うちの会社では、入社してすぐ顔写真を撮影して、名簿や社員証に使用する決まりになっている。


「そうですね、確か入社翌日くらいに撮ったような気がします」

「あの写真」


小林さんが何か言いかけたその時、ドン!と目の前に大皿が置かれた。大量の新鮮なサラダ。続けざまに、生ビール。


「今日は村山君のおごりだからね。たくさん食べていって」


もはや店員なのか客なのか、パッと見判断できないほどテキパキと配膳する中村所長に驚いた。


「所長までそういうこと言う!」


村山さんが恥ずかしそうに頭をかいている。
私は運ぶのを手伝おうかと中腰になったけれど、小林さんに制された。


「いつものことだから。座ってろ」

「そうそう。浅見さんは今日の主賓だからね、ゆっくりしていって。はい枝豆おまちどお!」


……中村所長、それは完全にお店の人のセリフです。


< 41 / 124 >

この作品をシェア

pagetop