雪国ラプソディー

「え、あ、ああ。……帰り送っていこうと思って」

「え?」

「ここ、駅から遠かっただろ? もう暗いし、引き出物重いし。だから」

「……」


私は自分の耳と、目まで疑った。ついに、幻聴に加え白昼夢まで自在に見られるようになってしまったのか。


「小林さん」

「何だよ」


私から目を逸らしている小林さんは、前に会ったときよりもみあげが短くなっていて。今日の日のために散髪に行ったのかもしれないと想像すると、つい笑顔になってしまう。本当に、どこまでも律儀な人だ。


「外、まだ明るいです」


揚げ足を取るようにそう告げると、小林さんは立ち上がった。


「ーーうるさい。ほら、行くぞ」


私の方を見ずに歩く彼の後ろをついて行く。私が大荷物なのを気遣ってくれたのか、さり気なく引き出物を2人分持って。引き出物は予想以上に大きかったから、全然さり気なく〝ない〟のだけれど。

嬉しい。
嬉しい!

心の中のたき火が、少し元気になった。


念のため手の甲を思いっきりつねってみると、悶絶するような激痛に襲われた。

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