リアル
「……高橋さんは、一緒じゃなかったんですか?」


「ああ、あいつ、さっき学校に戻っていったよ。教室に忘れ物したとかで」


会話はそこで途切れ、またここでも気まずい沈黙が流れた。

カイ先輩からもらったプリンは、なんだか手がつけられないままでいる。


高橋さんや――森川さんが戻ってくる気配はない。


「……あのさ」


カイ先輩はゲームをはじめ、特にあたしのほうを見ることもなく――静かにつぶやいた。





「おまえの好きなヤツ、って……森川?」














――心臓が、止まってしまうかと思った。

まるで時間が止まってしまったように、あたしはそこから動けなくなった。


「はは、その反応だと、ビンゴみたいだな」


カイ先輩は再びテレビのほうへ向きなおり、煙草に火をつけた。

白い煙がゆらゆらと立ち上り、あたしの全てを麻痺させた。

頭の中が真っ白になって、なにも考えられない。



ただ、カイ先輩の背中を――見つめることしか出来なかった。





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