リアル
そのとき、部室のドアが開いた。

そこに立っていたのは、森川さんだった。


「……おれ、帰るわ」


森川さんの姿を確認したカイ先輩は、ゲームの電源ボタンを雑にはじき、立ち上がった。

なにも言えずに立ち尽くしているあたしの横をすりぬけ、カバンを手にとる。


「……じゃ、おつかれ」


その様子を、森川さんは無言のまま見つめていた。


カイ先輩が、部室を出ていく気配がして――

誤解をとかなきゃいけないって、頭ではわかってたはずなのに、あたしは振り返ることさえ出来なかった。

追いかけることさえ、あたしには出来なかった。





「――大丈夫?」


膝から、崩れ落ちていた。

身体じゅうが、寒くもないのに震えて――あたしは両腕で自分の身体を抱きしめた。



どこかで聞いたことのある、その言葉……それを聞いたのは、いったいいつだった……?





「…………っ!」


森川さんのうめくような声が、音のなくなった部室に響いた。





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