SECRET COCKTAIL
雅弥がこの店をオープンする前に。
美來が働く建築会社に改装の依頼をしたのは全くの偶然で。
依頼主を知った美來が、自分にやらせてほしいと名前を伏せたまま店舗のデザインを引き受けたのだと言っていた。
雅弥の店が出来るまで、面談も他の担当に任せて美來は頑なに雅弥に会おうとはしなかったのに。
デザインを気に入った雅弥が、デザイナーに会わせてほしいと言ったことがきっかけで二人は再会する事になったのだ。
その偶然の再会を、密かに俺が喜んでいたのは二人も知らないだろう。
雅弥は随分戸惑っていたようだけど。
再会に開き直った美來が、毎日のようにこの店に押しかけている事は、美來からも聞いている。
それを雅弥がはっきりと拒絶していない事も。
こればかりは二人の問題だからどうする事もできないけれど。
俺だって、可愛い妹が幸せになってくれれば良いと心から願っているんだ。
だから、という訳ではないが。
俺が海外に行くことが決まった時に、雅弥に美來の事を託して行った。
それは兄貴的に見守ってほしい、という意味でもあったけれど。
俺にとってはそれだけでもなかった。