強引な彼の求愛宣言!
「こんにちは。こちらこそ、いつもお世話になっております」

《恐れ入りますが、三木さんはいらっしゃいますか?》

「三木ですね。少々お待ちくださいませ」



電話を保留にして、私は左後ろを振り返った。

そこには自分のデスクで黙々と業務に励む、融資担当の同僚の姿がある。



「三木さん! 東明不動産の、武藤さんからお電話です」

「はい」



彼はうなずいて、すぐに受話器を持ち上げた。

私の仕事、ここで終了。くるりと前を向いて、小さく息を吐く。


ああ──今日も武藤さん、素敵な声だった。

三木くんうらやましい。ほんとうらやましい。あの素敵ボイスと、仕事の話とはいえ長々会話することができるんだから。


同い年の同僚に名残惜しくもう一度視線を飛ばしてから、私は本部から届いたばかりのまっさらな伝票に支店名のはんこを押すという、地味だけれど重要な仕事に戻る。

これね、いざ物品庫から出して使おうってときに支店名がないままだと、めっちゃテンション下がるんだよね。だから手が空いてるときに、パパッとやっちゃわないと。

5枚綴り1セットが50枚束ねてある伝票を、1枚1枚めくりながら手早くはんこを押していく。

そしてこうやって単調な作業を続けていれば、頭の中は自然と、妄想モードに入るわけで。
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