強引な彼の求愛宣言!
「えっと……」



シートベルトをしながら、私は変な顔をしてしまっていたと思う。

そんな私の様子に、彼はまた笑みをこぼした。



「わかった。今すぐ答えられるほどおなかすいていないなら、このまままっすぐ俺の家な」

「っえ、」



思わずもらしてしまった声が聞こえなかったのかそれとも気にしてしないのか、武藤さんはあっさりギアを動かして車をバックさせ始めた。

そのまま車道に出て、走り出す車。運転する彼の横顔も見れず、ただひたすら自分のひざを凝視する。


どうして自分が今夜呼ばれたのかなんて、理由はわからなくて。

だけどこの車は、今まさに彼の家に向かっているという。

……それはつまり、“そういう”こと?



「そういえば俺ら、ちゃんと連絡先とか交換してなかったな。無事会えたからよかったけど」



慣れた様子で夜道を運転しながら、前を見据えたままの武藤さんが笑いまじりに話す。

ハッとして、ようやくその横顔に視線を向けた。



「あ、……そう、でしたね」

「まあ、後でいくらでも連絡先なんて交換できるから」



さらりとそんなことを言われて胸が高鳴る、けれど。

やっぱり、彼の真意がわからない。


……もしかして私、オトナな彼に、遊ばれちゃうのかな。

だって、私が彼に好かれる理由が、思い当たらない。それでもこうして呼び出されたということは、私が寄せている好意を、武藤さんが利用しようとしてるとか?
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