秘密の契約
日菜は上都大病院の救命センターに運ばれていた。


頭部のMRIや身体のCTなどの検査を受けていて千波が病院へ着くとまだ検査中の為に日菜の姿を見ることが出来なかった。



日菜……。


大丈夫なのだろうか。


検査に時間がかかりすぎている。



廊下の壁に寄りかかっていると日菜の母親が血相を変えてやってきた。



日菜の母は着物を着ていて出先から急いできたようだ。



「千波君!」


「日菜はまだ検査中です」


「階段から落ちただなんて……」


おろおろとしている日菜の母親をベンチに座らせる。


郁斗の起こした事故の時もこうしてみんなを心配させたね。


日菜……。


千波はいても立ってもいられない気分だった。


付き添いの教員が言うには階段から落ちた原因は足を滑らせたとの事だった。






しばらくして検査が終わった日菜はストレッチャーで運ばれてきた。



目は閉じられていて運ばれてからまだ目を覚ましていないと看護師が言う。



検査結果、問題は見られなかったが様子を見る為に数日入院しなければならない。


落ちた時に後頭部を少し切った日菜の頭には包帯が巻かれていて痛々しかった。




< 570 / 684 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop