秘密の契約

郁斗の計画

「日菜、なんか暗いな?」


黙り込んでいる日菜に郁斗の視線が移る。


「な、なんでもないよ」


「そんなわけないだろ?お前すぐに顔に出るから分かるよ もしかして兄貴の事?」


郁斗の観察はいつもながらに鋭い。



「あら、お兄ちゃんの事で悩んでいるの?」


郁斗ったら……お母さんの前で言わなくても……。


「もしかしてクリスマス・イブまだ兄貴から誘われていないのか?」


また鋭い所を……。


日菜の顔色で郁斗はそうなんだなと確信する。


「クリスマス・イブは恋人同士なら最大のイベントじゃない!」


お母さんが身を乗り出して言う。


千波くんのいない所でこんな話をするのは嫌だった。



「違うの……誘われたんだけど、仕事が入っちゃって……」



仕事という言葉で千波くんのお母さんが怒り始めてしまった。


あたしにではなくて会社に。




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