秘密の契約
「千波くん……」


顔を見て歓迎されていない事が分かった。


日菜は穴があったら入りたいくらいに恥ずかしかった。


「兄貴、日菜が来たんだぜ 喜ばないのかよ」


すぐに郁斗は気を取り直して千波に言った。


千波はうつむいてしまった日菜しか見ていなかった。


「日菜……」


日菜は自分の名前を呼んだ千波から深いため息が漏れたのが聞こえた。



その瞬間、涙が出そうになった。


千波くん、怒ってる。


ごめんなさい。邪魔はしないからと日菜は謝ろうとした時、



「あら?日菜さん」



聞き覚えのある女性の声がした。



驚いて声のした方を見ると十和子が口元に微笑を浮かべて千波の隣に立っていた。



「……十和子さん」


日菜の口から小さく漏れた。







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