秘密の契約
「ほら、日菜　お皿持って」


愛が日菜にお皿を渡す。


「う、うん」


愛からお皿を受け取って食べやすそうな料理を取っていった。





千波は会場の隅から日菜の姿を見ていた。


日菜は見られている事も気づかずにぼんやりしている。


表情が暗いのは遠目からでも分かる。


その時、日菜のすぐ傍にいた郁斗が頭をめぐらし千波と目が合った。


郁斗がイスから立ち上がり日菜たちのテーブルから少し離れると携帯を取り出した。



ブルルルルル……


ポケットに入っている千波の携帯が振動した。


郁斗は遠くから携帯に出ろとジェスチャーしている。



くっそ　出ろよ　兄貴！


ホテルへ到着してから数回千波の携帯に電話をかけているがどれも出なかった。


郁斗は出ない兄を睨みつけながら千波の元へ向かおうとした時、


『郁斗　仕事中だ』


「ちょっと待てよ！」


切られないように郁斗は叫んだ。




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