秘密の契約
テラスには誰もいなかった。


吐くと息が真っ白だ。


ジャケットを羽織っていても寒い。


ディナーシャツ一枚になった彼も寒いだろう。


「ごめんなさい 寒いですよね」


日菜の鼻の頭が真っ赤になっている。


「いいから それよりツリーはどう?」


「あ……」


日菜はツリーに目を移した。


きれい……。


日菜は感嘆の声が漏れた。


横にいるのが千波くんだったら良かったのに……。


こんな所に来なければ良かった……。


来なければ何も知らずにいられたのに。


千波くんと十和子さんが……想像したくない。


本当に十和子さんが好きになってしまったの?







「日菜!」


怒りを含んだ声が寒さで真っ赤になった日菜の耳に聞こえて驚いた。


驚いて振り向くと千波が1メートルほどの所に立っていた。


「ち……なみ……くん」


怖い顔している……。


嫌だよ……。





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