秘密の契約
「いらないっ！」


日菜はジャケットを払い落とすとテラスから外に通じる階段に足をかけた。


「なに考えているんだ！落ちるぞ！日菜っ！」


千波から逃げたくて何も考えられなかった。


ずるっ


「きゃっ！」


「日菜っ！」


千波の叫んだ通り、日菜は凍った階段に足を滑らせて落ちそうになった。


追いかけた千波は手を伸ばし日菜の腕を掴んで引き寄せた。


が、千波の革靴でも滑った。


２人は７段転がって雪の上にドサッと落ちた。



「大丈夫ですか！？」


階段の上から青年が叫び下へ降りてくる音がした。


千波の腕の中でぎゅっと目を閉じていた日菜はそっと目を開ける。


千波に抱きかかえられるようにして落ちた日菜は背中が少し痛んだが他はなんともない。


ハッとして自分の下の千波を見る。


「千波くん！？」


雪の上に自分をかばうようにして倒れている千波が目を開けない。


「千波くんっ！？」




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