秘密の契約



<ごめん……傷つけて……あとで部屋に行くよ 落ち着いたら話そう>



日菜は部屋に戻ってソファーの上に膝を抱えて座っていた。


医務室で千波が別れ際に言った言葉。


あの後、千波は郁斗を呼んで迎えを頼んだ。






「兄貴がどうして捻挫したのか話せよ 日菜」


ぼんやりソファーに座っている日菜に郁斗が目の前に来て聞く。


「あたしが悪いの……」


「お前のせいだろうとは思っているよ 兄貴がそんなドジを踏むわけないから
な」


「郁斗、日菜の話を聞こうよ 日菜、ちゃんと話して」


愛が言う。


日菜の両脇に愛と梨絵が座っている。


「どこにいたの?朝倉くん、すごく探していたんだよ?」


梨絵が少し責める口調で言うと日菜が小さく「ごめんなさい」と言うだけ。


「だから、謝ってもらうんなら説明してもらった方がいいんだよ」


目の前のソファーに座っている郁斗は静かに言った。




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