秘密の契約
「ニセコへ来たのは日菜の考えじゃないだろう?」


今朝、母から能天気な声で日菜とうまく行っているかと電話があったのだ。


「うまく行っている」と言うのに間を置いてしまった千波に母が心配そうな声になった。


『けんかでもした?日菜ちゃんはそっちに行くの渋ったのよ それを私と郁斗で勧めただけだから日菜ちゃんは悪くないの お願いだからけんかしないでよ?日菜ちゃんを大事にしなさいね』


そう言いたい事だけ弾丸のように言って電話が切れたのだ。


日菜が大きくかぶり振る。


「だって……来たのはあたしの意思だから……」


「来てくれてうれしいよ」


「でも……あの時……怖い顔してたもん」


ホテルのロビーであった時のことだ。


「あぁ……怖い顔をしていたつもりはないけど日菜の姿を見て驚いた 仕事中だから理性が働いてしまったんだ……でも日菜の事は自分の命より大事だよ 愛している、日菜」


「千波くん、ありがとう あたしも愛してる……へへっ もうやめよう?」


これ以上、辛かった時の事を思い出したくもないし話もしたくない。


2人はおいしい料理をゆっくり堪能した。




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