オタク女子。

***


「いい子じゃないの」

「まあな」


さつきがお手洗いに客間から出た後、ひかるは紅茶をテーブルにセットしながら受け答えた。すると佐智子が何か含みのある声で、


「しっかりつかんで離さないことね。好きなんでしょ?」


と言った。思わずその手を止めて母をまじまじと見返す。
何もかもお見通しって訳か?一体なにを言ったんださつき……。

「あら、さつきさんのせいじゃないわよ。二人の距離感がまだ恋人って感じじゃなかったから。母を騙すなんて百年早いわね」

ひかるは黙った。佐智子は続ける。

「私のことは心配しなくていいからね」

「え、」

「大丈夫。 私前から老人ホーム入ってみたかったの。いい機会だからそっちに移ろうと思って」


だから私の介護のことは気にしないでと母が微笑んだ。貴方が気を使う必要はない、と。佐智子が倒れて下半身に麻痺が残ったとき、ひかるはさつきを諦めた。

自分は仕事をしたい。
するとどうしても妻は家庭に入れる人になってくる。さつきは常に仕事は続けたいと言っていた。無理だ、と思った。







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