そっと、きえていく
電話を手にとり、メールの画面を開くまでの一連の動作は、普段のわたしからは想像もできないほどの、きびんなものだった。

≪加奈ちゃん≫
本文:
【何、どうしたの? 今のとこ、あたしんとこにはメール来てないよ。大丈夫、2人一緒だから。もうちょっと落ち着いて】

短い、しかし的確なアドバイスを含むメール。
わたしはこの数行の文章を読み、焦燥感をいっそう募らせ、2人一緒、という文句にもどこか疑い深くなるのだった。

実際にメールの来ていない加奈ちゃんには、この責められる苦しさは伝わらないだろうに。
そんないやらしいことまで、平気で考えていた。
もしかしたら、わたしをはめたんじゃないか。
だって、あんなに生徒のいる中学校で、たまたま帰る2人の姿なんて、目撃されるものなのか。
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