恋の後味はとびきり甘く
 運転していたおじさんに怒鳴られ、私は目を開けてあわてて頭を下げた。

「ご、ごめんなさい」
「気をつけろっ」

 おじさんが吐き捨てるように言って、再び自転車をこぎ出した。私は顔をあげて商店街の先に視線を送ったが、涼介くんの姿はなかった。

 どうしよう。見失っちゃった……。せっかく来てくれたのに、もう二度と会えないの……?

 膝から力が抜けてその場にくずおれそうになったとき、右腕を力強い手で掴まれた。

「すみません……」

 どうにか足に力を入れて立ち上がり、お礼を言おうと右側を見て驚いた。私を支えてくれていたのは涼介くんだったのだ。

「どうして……」

 つぶやくような私の声に、涼介くんの言葉が重なる。

「どうして俺を追いかけてきたんですか? 彼氏を置いてまで来ることなかったでしょう」

 涼介くんが言って、私の腕から手を離した。彼のぬくもりが消えて心細くなる。
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