恋の後味はとびきり甘く
「涼介くん……」

 恋の切なさもキスの甘さも肌の熱さも、すべて教えてくれたのはあなた。

 つま先から頭の先まで、快感が嵐のように体中を駆け巡る。それに溺れそうになり、彼にギュッとしがみついた。

 その快感がやがて余韻へと変わり始め、耳もとで聞こえる涼介くんの呼吸が穏やかになった。彼がそっと体を起こし、いつもの通り私の隣に体を横たえて、私を腕枕してくれる。

 目が合って、彼が口もとを緩めた。いつもよりずっと淡い笑み。

 ねえ、今日はどうしてそんな顔をするの?

「鈴音さん」

 見つめ合った瞳から、熱情が消えた。刹那、愁いを帯びて私を見つめる。いつもなら好きです、とつぶやいてキスしてくれるのに。

 ドクン、と心臓が嫌な音を立てた直後、彼の瞳に強い光が宿った。

「俺、やっぱりベルギーに行きます」

 いつかその決断を下すのだとわかっていた。でも。

 今、それを言うなんて、年下のくせにずるい男(ひと)。 
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