恋の後味はとびきり甘く
　彼が恥ずかしそうに頬を染めた。男性にこんなふうに思うのは失礼かもしれないけれど、なんだかかわいい。

　クスッと笑ったら、彼の顔がさらに赤くなった。

　いけない、お客様を笑うなんて。

　私が神妙な顔を作ると、彼も真顔になった。

「それで、もっといろんな味を知りたいと思ったんです」
「そうなんですね。ショコラティエを目指しているんですか？」
「将来はそうなりたいと思っています」

　彼がニコッと笑った。夢を持った笑顔、いいなぁ。

　最近、ずっと赤字の帳簿ばかり見て疲れているからか、こういう誰かの笑顔にすごく癒やしを感じてしまう。

「同じ学校の女の子に、ここは無名だけど世界のおいしいチョコレートを売ってるよって聞いて、来てみたんです。そうしたら、思った以上にキレイでおいしそうで迷ってしまって」

　その言葉に私はうれしくなった。

「私が実際に食べて気に入ったものだけを扱ってるんです」
「じゃあ、全部あなたの好きなチョコレートばかりなんですね。好きなものに囲まれてるっていいなぁ」
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