恋の後味はとびきり甘く
 これでいつでも連絡が取れるんだ。

 私がメモ帳とボールペンを受け取ったとき、涼介くんが壁の時計を見て「やばっ」と声をあげた。

「休憩時間、あと十分だ。ダッシュで戻らないと」
「え、ど、どうやって来たんですか?」
「店の自転車を借りたんです! バイト先は隣の駅前の洋食屋なんです。それじゃ、鈴音さん、絶対メッセージくださいね!」

 涼介くんが言って片手をあげたかと思うと、店を飛び出していった。店の前に停めていた自転車に跨がり、顔を上げてガラス越しに片手を振る。私も手を振り返し、彼がペダルをこぐのを見送った。

 彼の姿が見えなくなって、私は手の中のメモ帳に視線を落とした。自然と笑みがこみ上げてきて、頬が緩んでしまう。

 昨日の涼介くんの言葉も、私が考えていたような意味じゃなかったんだ。ユキさんとは本当にただのクラスメイトだったんだ。

 わかってしまえばなんてこともないことだったのに、なにをうじうじ悩んでいたんだろう。

 私はメモ帳をギュッと胸に抱いた。

 家に帰ったら絶対すぐにメッセージを送ろう! 
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