王子の初恋は私な訳ない

王子の部屋は統一感があり凄く綺麗だった。
私は恥ずかしくて、とりあえずベットとテーブルの間の絨毯の上に座った。
王子は制服の上着を脱ぎ、冷蔵庫から何かを取り出した。

私が1番好きな乳酸菌飲料その名も…

「ノビールだ!!!」
思わず声に出してしまった。
咄嗟に手で口を抑えたが後の祭り。

「これ好きだったもんね。」
王子はそう言いながら笑っている。
とても恥ずかしい。
王子は私の隣に座り、500mlのペットボトルに入ってるノビールを2つのグラスに分けてくれた。
「ありがとう!!これさ、中に入ってるナタデココの食感が凄く好きなの!」
そう言うと王子の手が私の頭に乗った。
びっくりして自分の時を止めたが、王子のその手はゆっくり私の頭を撫で始めた。

「ち、ちょっと前までさ!タピオカめっちゃ流行ってたけど、私は断然ナタデココ派なんだよね!な、なんか小さい頃から好きだから懐かしいってかなんかそ、そんな…」
と私はどうすればいいか分からずとりあえず話してみたが何を説明してるのか訳が分からなくなっていた。
私の頭を撫でていた手がいつの間にか私を抱き寄せ、私と王子はピッタリくっついてしまった。
私は今までの人生を走馬灯のように最速で振り返ってみたが、これ程迄に気持ちが浮いた事はなかった。
そう思ったら王子を振った女は凄いと思った。
この誘惑に負けないなんて。

王子は私を抱きしめながら頭をしきりに撫でていた。
ずっとこうされていたら寝てしまうと思うくらい心地が良かった。

・・・少し冷静になり本当の事が知りたくなった。
王子が私にこんな事をするのは寂しいからで、本当は別に好きな人が居るとちゃんと王子の口から聞いた置きたかった。
分かってて騙されるならそれでいい。
このままだと両思いなのではと勝手に勘違いしてしまう。

「ねえ、王子。」
「・・・ん?」
「王子好きな人・・・居るって本当?」
そう言って王子の顔をみた。
すると、王子はびっくりした顔をしてから
「うん。居るよ。」
そう笑顔で言われた。

あーここまでハッキリ悪びれもなく言えたら大したもんですよ。
流石王子様ですよ。

私は少し王子から距離をおいて
「そっか。」と返事をした。
分かっていたのにやっぱり切なかった。

どうすればいいか分からなくなった。
けどここはやはりウケを狙わなきゃと思い
「王子、振られたって噂で聞いたけど・・・私で良いなら慰めてやるぜ!」
と言いながら両腕を広げてみた。
すると王子は小さい子供みたいに思いっきり胸に飛び込んできた。
あー、寂しかっただけなんだなと思った。
でも内心とても嬉しかった。
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