王子の初恋は私な訳ない
最寄り駅は凄く混むから、乗る時気合い入れないと上手く乗れない。
それなのに昨日の放課後の事を思い出していた。
…あれ?そういえば私学校でノビール飲んだ事あったっけ?
なんで知ってるんだろう?
そう考えていたら少し出遅れてしまって渦に巻き込まれた。
満員電車の渦に流されてくうちに、逆側のドア付近まで辿り着いてしまった。
ドアには背が小さい細い女子が居て、思いっきり押しつぶしそうになった。
咄嗟にドアに手をついて彼女への衝撃を和らげた。

これぞ今流行りの壁ドン。
何やってんだ私、ここに来てまた男らしさを発揮してしまったと思いながら電車に揺られる。
さっきまで普通に走ってた電車が少しブレーキをかけたと思ったら、それがやけに長い。
何やら急停車のようだ。
私は壁ドン状態のまま、急停車の反動で横に流されないように自分の身を守った。
目の前の女の子は私に捕まってなんとか難を逃れた。

緊急停車の案内がなる。
どうやら遮断器を越えてった馬鹿な車が居たらしく、5分程度止まって点検したがすぐ動いた。

「あっあの、ありがとうございますっっ。」
目の前の女の子から声が聞こえてみてみると、上目遣いで私を見ていた。
「大丈夫だよ。」そう言って笑って見せた。

やっぱり女の子って可愛いな。
私もこんな女の子になりたかったなと思った。

最寄り駅に着き電車が止まる。
私側ではない方のドアが開いて一斉に人が流れる。

そういや、女の子は同い学校の生徒らしい。
同じ制服を着ていた。

ある程度人が流れた後、私も出口に向かった。
すると手を引っ張られた。
何事かと思って振り返るとさっきの女の子だった。

「ん?どーした?具合でも悪い?」
そう言って顔を覗き込もうとしたら、バッと顔を上げた。
危なく顔が彼女の頭にぶつかる所だった。
彼女は顔を真っ赤にして

「本当はずっと前から見てました!好きです!付き合って下さい!!」

と私の目をみて私の腕を握りしめ言った。


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