王子の初恋は私な訳ない
家に入ると王子は麦茶を用意してくれた。
ドキドキしながらグラスを手にして口をつけた。
すると王子は隣にきて私を横から抱きしめた。
びっくりしてグラスを落としそうになった。
「王子っ!どっ...どうしたの!?」
そう言うと王子は私の体を真正面になるように向き直した。
「...前から俺に惚れてたってほんと?」
真剣な目でそう言った。
なんの事だろうと思ったけどそうだった。
お昼にシゲに茶化された時そう答えたんだった。
「そ...そうだよ。」
嘘は付けなかった。
「いつから?」
王子の質問は終わらなかった。
ここは腹を括るしかない。
「え、えっといつからかわごめん覚えてない」
「うーん…じゃあどうして?」
「…王子は綺麗だなって思って見てたんだ。なんで寝癖すらこんな綺麗に見えるのかなって思ったら、そ、そりゃあ容姿が整ってるのもあったけど…王子って絶対人の悪口言わないよね。どんな人に対しても対等に接するよね。そ、そういう姿勢から綺麗なんだなって…。」
そう言うと王子は一段と目を見開いた。
そしてぎゅっと私を抱きしめてくれた。
「俺はね、初めて見た時からずっと好きだったんだよ。」
そう言ってしっかりと私の事を見た後
またキスをした。
「愛理は昔から変わらないね。」
「…え?今なんて?」
今なんかとても両思いっぽい気がするって思ってたら王子が何かを言ったのに聞き逃してしまった。
すると王子はふと笑って
「ねえ、名前で呼んで?」
王子はそう言って私の肩を握った。
「岩谷...くん?」
そう言うと王子は首を振った。
「...優人...くん。」
そう言うと王子は見たことも無いくらい
優しく微笑んでくれて強く抱きしめてくれた。
「愛理、大好きだよ。」
そう言ってまたキスをした。
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