かわいい君まであと少し
【5】最後だから
「聡、本当にこの五日間ありがとう」
 金曜日、仕事を終えた私たちは聡さんの部屋に来ている。
 今は四人での最後の夕ご飯を食べ終え、後は帰るだけといった状況だ。
「そんな、いいですよ。僕もすごく楽しかったし、志穂ちゃんと遊ぶうちに新しいアプリにアイディアもいくつか浮かんだんで。僕にはいいこと尽くしでした」
 聡さんはやっぱり天使だ。世の中にこんな純粋な成人男性はいないと思う。聡さんにはずっとこのまま天使でいてほしい。
 私は余ったオムツやタオルなどを紙袋に詰めながら、そんなことを思っていた。
「聡さんのおかげで本当に助かりました。聡さんが志穂ちゃんのことを預かってくれなかったら、私たちどうしたらいいかわからなかったですよ。本当にありがとうございます。夕ご飯もいつも美味しかったです」
 少しはにかんだ聡さんは「そんなにお礼を言われると照れますね」と言った。そして隣に座っている志穂ちゃんを自分の膝に上に乗せる。
「志穂ちゃん、五日間、僕は志穂ちゃんと一緒に遊べてすごく楽しかったよ」
 志穂ちゃんは聡さん顔を見上げて「たのしい、ともだちね」と言った。
「うん、お友達だよ」
 聡さんは名残惜しそうに志穂ちゃんを膝から下ろし「そろそろ帰らないとね」と言った。
 志穂ちゃんをベビーカーに乗せて、私と望月課長は荷物を分担して持った。
「じゃあ、俺たち帰るよ。今度、晩飯おごるから」
「はい。喜んでいっぱい食べます」
 こういう会話を聞いていると、先輩後輩なんだなと思う。

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