かわいい君まであと少し
「私の返事待ち」
「なんだ、早く好きって言えばいいのに」
「そうなんだけど」
「けど、何?」
「慣れてないの」
 由加里はハンバーグから視線を上げ「何が?」と聞いてきた。
「あんなふうに自分を好きですっていうのを、はっきり示してくる人って初めてなの。今まで付き合った人はみんな友達からの延長線って感じだったから」
「そっか。恋愛から始まってないんだ、今までの恋は」
「うん」
 カニクリームコロッケを半分に切り、口の中にいれる。クリームの甘み噛みしめながら、ため息をついた。
「ご飯食べながら、ため息つかない」
「ごめん」
「ねえ、恋愛の仕方って、相手が変われば何もかも違うの。たとえ同じようなタイプと同じような恋愛を何度もしたって、それは全部違う恋愛なんだよ。だから過去の恋愛と比べてもしょうがない。過ぎ去った恋から得るものは、次はもっといい恋愛をしてやろうというバイタリティーのみよ」
「さすが由加里、かっこいいよ」
 ハンバーグを食べる由加里を見て、そういうふうに前向きな恋ができたらいいのにと思った。
 みんな違う恋か。
 自分のお皿に乗っているコロッケを見て、君たちはみんな違うのかいと、心の中で問いかけてみる。当たり前だが返事はない。
 馬鹿なことやってないで、早く食べてしまおう。
 由加里の再開されたのろけ話を聞きながら、返事をしてくれなかったコロッケたちを食べきった。

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