かわいい君まであと少し
 松本の顔が一瞬にして不機嫌になった。
「松本には関係ないでしょ」
「そいつと付き合って、まだそんなにたってないだろう。俺とは三年も付きだったんだし、な」
 電話であんなにはっきり振ったのに、何もわかってない。
「私ね、松本と付き合って一度も家族になりたいって思ったことがないの。でも、今つき合っている人は、そうい未来があったらいいなって思える人なの。だから松本はやり直せない」
 松本から視線をそらさずに言うと、松本のほうから視線を外した。
「そうか。俺がいけなかったんだよな。怜子は何があっても俺の傍から離れないみたいな、変な過信があったんだ。違ったんだな。ごめん」
「もう、いいよ。新幹線の時間、平気?」
「ああ、もう行くよ。今まで、ありがとう」
 喫茶店から出ていく松本の背中を見送った。

 ダメな奴だったけど、松本にもいい人が現れるといいなと思った。
 そんなふうに思えるのも、きっと悠太さんのおかげだと思う。

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