キミに恋の残業を命ずる

「これ、ぜんぶさばくの…?」

「ええ、まぁ。でも見かけほど多くないんですよ」


と保冷ボックスを持ち上げる。


「大丈夫?持つよ?」

「あ、だいじょう」


断る前に課長はひょいとわたしからボックスを取り上げてしまった。


「重くないですか?」

「全然」


と、三箱一緒に持ち上げる。

一匹と言っても、まるまるだとけっこう重い。
それを三箱持っても表情ひとつ変えない課長に、ちょっとおどろく。
なんとなく、見かけの雰囲気で、重いもの持たなそうに見えたから。

…けど、腕まくりした二の腕に浮かぶ筋は、男らしくてドキリとする。


「運ぶから、キミは中に入ってて。大丈夫、助っ人呼んでるからさ」


え、助っ人?


と訝しむと、部屋から男の人が出てきた。


「服部部長…!」

「やぁ、おつかれさま」


と口端を寄せる部長だけど、課長以上に眠そうでお疲れの顔をしている…。
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