キミに恋の残業を命ずる
夕方。


営業の人が外回りから帰って来ていた。

直帰する人が多かったけど、最近は忙しいので帰社する人が多い。
報告を受けるわたしも、資料をまとめるために残ることが多かった。


けど今日は、日中の仕事の処理が終わらないための残業だった。

今日一日うわのそらで、しばらくしていなかったミスまでやってしまった…。


朝の田中さんの言葉が頭から離れなかった。


わたしやっぱり、課長のことを好きになっていた。

田中さんの言葉はわたしにそんな残酷な自覚をあたえ、そして同時にその想いがけして叶わないのだと知らしめた。


亜依子さんが結婚。相手は社の未来を担う人…。


課長しかうかばない。


どこから出たのかもわからない根拠のないウワサだ。
…でも、そうやってふっきれないのは、やっぱり課長の部屋で見たポーチのせいだ。

あれが亜依子さんのだって決まったわけじゃない。
けど…言い知れぬ不安が、わたしを追い込んでいた。
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