レンタル夫婦。

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時刻は12時47分。
湊と共にこのレンタル夫婦の発端となった株式会社トゥリープのあるビルへと向かった。
湊は朝の甘えたが嘘みたいにしゃんとしていた。
スーツだからかもしれないけれど、少し大人っぽく見える。

玄関でありささん達に迎えられエレベーターへと乗り込む。
そのまま最初に使った会議室へと通された。

「お忙しい中起こし頂きまして有難うございます」

そう頭を下げた人が、一瞬誰だか分からなかった。
何だか見たことがあるけど、名前が全く出てこない。

「……榊さんだよ」

それが顔に出ていたのか、湊が耳元でそう囁いた。
湊ナイス! なんて心の中でお礼を言って、それから私も会釈を返す。

「お久しぶりです、サカキさん」
覚えるために敢えて名前を呼ぶ。と、榊さんは嬉しそうに微笑んだ。

「覚えて頂けて光栄です。それでは早速報告会を始めますので――」


それぞれが席に着くと榊さんがそう声を掛けた。
初めて会った時と同じ場所でほぼ同じメンバーだったけれど、あの時とは違って、湊は向かい側ではなく隣に座ってくれた。
榊さんが色々と説明を始める。……と、湊の右手が私の左手に触れた。
テーブルの下で、そのままぎゅっと握られる。
驚いて湊を見遣るけど、真剣な表情で配られた書類を見つめていた。

……う、こういうの、ずるい。そう思うのに振り払えるわけもなくて、私はそっとその手を握り返した。



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