凸凹リレイション


 駅のホームに着いた時には、明日美は汗だくになっていた。途中、明日美を待ちながら休憩していた香苗は、それほど息も弾んでいないが、明日美はゼイゼイと肩で息をしている。

 汗を拭こうとハンカチを取り出したとき、明日美のポケットから一緒にティッシュが落ちた。

通学時間の電車は混んでいて、ホームは人が雑多にあふれている。落ちたティッシュを拾おうと明日美がかがむのと同時に、到着した電車の扉が開いた。途端にたくさんの人があふれ出て、そして乗る人が吸い込まれていく。


「あ、あれ。やだ」


 出る人に押され、乗る人に飛ばされ、ふらふらになった明日美の手を香苗は軽く舌打ちをして引っ張る。


「何してるの。ホラちゃんと自分の足で立って」

「う、うん」


 香苗のおかげで、何とか明日美もすれすれのところで電車に乗れ、ふたりでふうと息をつく。


「もう、どんくさいんだから」

「へへへぇ。香苗ちゃんありがとぉ」


(ありがとぉ、じゃないでしょ)


にこりと笑う明日美に、香苗は苦笑するしかない。せっかく走ってきたのに、今ので電車に乗り遅れたらどうする気だ。


地味でどんくさくい明日美に、イライラするのはいつものことだ。
それでも、一緒に通うのは日常になってしまっているからか。


(まあ親の目もあるし。……妹みたいなもんだしなぁ)


明日美に対するいら立ちを、香苗はいつもそんな言葉で置き換えていた。
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