凸凹リレイション
*凸*
 
 一時間目の授業中、香苗は頬づえをついて窓の外を見ていた。
 頭の中でリフレインしているのは、昨日の明日美の言葉だ。
 
『キライ』

 そこまではっきりした拒絶の言葉を明日美から聞いたのは初めてだった。思い出すだけで眉間にしわが寄る。

 抱き合ったと言ってもこっちが一方的に抱きついたってだけの格好だ。明日美と俊介の間に信頼関係があるならすぐに解ける誤解のはずだ。そこまで悪いことをしたわけではない。

 それに、ケンカ別れして困るのは明日美の方のはずだ。ふたりの関係では、いつも助けるのは香苗の方だ。明日美に嫌われたところで香苗には何の支障もない。

(なのに、なんでこんなにイライラするの)

 授業内容など、まったく頭に入らなかった。明日美のあの歪んだ眼差しが頭から離れない。忠志からの別れのメールよりショックを受けてることに自分で驚きつつ、やりきれない思いに爪を噛む。


「松崎、問四をやってみろ」

「え? あ?」


 急に教師に指され、うわの空だった香苗は上ずった声をあげた。


「聞いてなかったのか? 問四だよ」

 
 数学教師の立花が黒板を軽く叩く。香苗は自分のノートを見た。問四どころか一問目すら終わってない。仕方なく、しおらしく立ち上がって頭を下げる。


「……すいません、分かりません」

「話聞いてなかったな?」


 教師の声に、嫌味な響きが加わる。香苗は普段からスカート丈や外見の派手さで教師には目をつけられている。
教師にとっては、やり返すのに格好のタイミングなのだろう。


「すいません」


 反論する元気もなく、素直に謝ると教師は拍子抜けしたように肩をすくめた。


「わかった。座っていいぞ」

「はい」


 香苗は席について溜息を吐き出した。こんなクソ教師にやりこめられるなど屈辱だが、調子が出ないのだから仕方ない。

(それもこれも、明日美のせいよ)

 むくれ面のまま、香苗はため息を落とした。


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