凸凹リレイション
*凹*


 五時間目開始のベルはずいぶん前に鳴り響いた。明日美は膝を抱えたまま、屋上の風に吹かれている。人生初のサボリに居心地悪さを感じながら、ひざに頭をうずめる。
 

(八重ちゃんが、三笠くんを好き……? だったら私なんかより、八重ちゃんの方が似合ってる)


 繰り返し繰り返し、八重の差すような眼差しがよみがえってくる。もう八重に嫌われたかもしれないと思うと、ますます涙が止まらなくなる。

 
 五時間目の開始までには何とか泣き止んで教室に戻ろうと思っていたのに、止められずにずるずるとここにいて、結果としてサボりという状況になっているのだ。


(ずっと楽しかったのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう)


 瞼をこすりながら、明日美は唇をかみしめる。
 好きな人ができたら、楽しいことばかりかと思っていた。だけど、現実は漫画のようにうまくはいかない。
  

(……ううん。漫画だってそんなにうまくいかない)


 必ずライバルは現れるし、好きな人とはすれ違う。でもヒロインは必ず苦難を乗り越え、ラストはハッピーエンドだ。そうなると分かっているから、安心して読んでいられる。
 

(でも私が、三笠くんに好きになってもらえるわけない)


 ラストが信じられないから、頑張れない。だから彼のことは忘れてしまおうと思っても、頭の中から消えてくれない。頑張れない自分に、恋なんてする資格はないのに。
  

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