放課後、キミとふたりきり。

もっと彼らを信じたい。


ああ、そうか。


信じること。

きっとそれが居場所をつくるんだ。



「みんな、ありがとう」


行ってきます。

そう言って笑顔で視聴覚室をあとにした。


静かな廊下に出て、後ろ手に扉を閉める。

しばらく自分の足元を見つめていたけれど、大きく深呼吸をして顔を上げた。

まっすぐ前を見据えて。


ここに来る前と状況は何も変わっていない。

なのに気持ちはこんなにもちがう。

胸に灯った勇気のともしびが消えないうちに、教室に戻ろう。


ひとつ、決めたことがある。

矢野くんに笑ってほしいなら、私も笑おう。


教室に戻ったら、何があっても笑顔だけは絶やさないと心に誓った。




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