放課後、キミとふたりきり。

「ご、ごめんなさい……」

「いや、謝ってほしいんじゃなくて。普通にできねぇの?」

「普通……に、してるつもりなんだけど。なんていうか、どうしても、緊張しちゃって……」

「緊張? なんで。同級生なのに?」



意味が分からない、と寄せられた眉が語っている。

けれど正直に「怖いんです」と説明できるはずもない。

そんなことを言われても、矢野くんも困るし傷つくだろう。


茅乃の言っていた通り、きっと彼は怖い人ではないんだと思う。

ただ、人よりものをはっきり言うし、それを相手にも求めている。

それだけ。

相手を傷つけようとして言っているわけじゃない。


わたしがただ、矢野くんの求めているものを差し出せずにいるだけだった。

矢野くんが悪いんじゃない。

わたしの弱さがいけないのだ。



「そ、そうだよね。変だよね。ごめん……」

「だから謝られても」


ため息をつかれ、泣きたくなる。


いつもこうだ。

わたしの言動はいつも、彼を苛立たせてしまう。
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