自殺という名の地獄
 最初に目に飛び込んできたのは、どこかの会社らしきとこにいる男性の姿だった。実に忙しそうだ。しかし、どこか充実しているようにも見える。目が生き生きとしている。
「これ、もしかして俺、ですか?」
「はい。あなたです。お世辞にも大きな会社とはいえませんが、しっかりした会社です。あなたはそこに就職するはずだった。そこで少ないながらも一生付き合うことのできる友人もでき、仕事の楽しさも知り、同僚や、上司にも恵まれるはずだった。そこで定年を迎えるその日まで働けるはずだったのです。あなたが生きるのを諦めさえしなければ、ね。しかし、それをあなた自身が捨てたのです」
俺は何も言えなかった。俺の中の"後悔"という名の風船が着実に膨らんでいくのが分かった。
「次にお見せする未来が、あなたにとって一番衝撃的かもしれませんね」
男がそう言うと、また目の前が歪み始め、風景が変わり始めた―。
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