私のエース
 そこでキューピッド様が登場することになったらしい。


一人の女生徒が、藁半紙の上にハートマークを書く。


「キューピット様だからハートなのよ」


「はい。出来たら真ん中に矢を書くの」


「調べて来たの?」


「まあ、そんなとこ」


「それじゃ、私が」

そのハートの真ん中にへ百合子が矢を足した。


そんな事を言いながら、黙々と作業は進んだ。




 キューピット様は他の邪悪な占いと違い、鉛筆を使用する。

その手軽さが小学生にうけて一気に広まったのだった。

はい、いいえ。
そのくらいしか要らないのだ。
《あ》から《ん》まで書くより手っ取り早いからでもあった。


「何か懐かしい」


「でも子供じみてるよ」

笑ったのはみずほ同様、保育園から一緒だった千穂だった。


「あっ、思い出した。確か四人でやっちゃダメなんだよね。何だか、その内の一人に憑くんだってさ」


でもそんな言葉に耳も貸さず、町田百合子が鉛筆を立てた。

慌てて他の連中もそれを握った。
その時鉛筆を握った手は四人以上いたのだ。
だから、みんな安心したようだ。




 千穂は鉛筆を持ちながら首を振っていた。

何か不自然なものを感じたのかもしれない。

まだ何も、誰も質問していないのに……

もしかしたら千穂はこの時、何か違和感を覚えたのかもしれない。


(千穂。それは一体何なのか教えてほしいよ……)

俺は千穂の表情を気にしながら、みずほのコンパクトの鏡面を見つめた。




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