私のエース
 キューピッド様。
聞こえは良いが、ようするに狐狗狸さんだ。
狐に天狗に狸。
邪悪な……そう思えてならなかった。


以前何かの雑誌で読んだ事がある。
キューピッド様だかエンジェル様だか忘れたが。

学校で遊んでいた時帰ってくれなくなったらしい。

十円玉から指を離すと死が待っている。

そう思い誰も帰れなくなったそうだ。


余りに帰宅の遅い子供を迎えに学校へ父兄達が集まった時は、みんな半狂乱になって泣きながら机を囲んでいたと言う。



そんな邪悪な占いで、みずほの死がもてあそばれたのだ。


俺は始めたヤツを許せないと思った。




 不思議だった。
何故見えるのか、解らなかった。


俺が心を込めて贈ったコンパクト。

みずほを綺麗にするためではない。

だってみずほは充分美しくセクシーだった。
セクシャルと言った方が正しいのかも知れない。


内面から湧き出す魅力がみずほにはあった。


叔父さんの探偵事務所でアルバイトした初めての給料で買った物だった。

みずほは心から喜んでくれた。


『瑞穂の為にもっと可愛い女性になるね』

だからそう言ってくれたのだった。




 俺はみずほの残したコンパクトを通して事件の真相を知ろうとした。

でも何故俺にそんな能力があるのだろう?

それは俺自身も解らない。

きっとみずほの心が見せてくれたのだと思う。


俺に真実を伝えるために。


でも、そしてそれが……
新たなる悲劇への始まりになることなど……
俺には知る由もなかった。


そうこの事件はこのままでは終わるはずがなかった。


三連続で死が発生する。

これはまだ序章に過ぎなかったのだ。




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