私のエース
 「大丈夫ですよ先生。そもそもキューピット様を始めた頃はきっと通夜の準備とかで……」
俺は先生の耳元でこっそり囁いた。


「あっ、キューピット様をやったのは松尾有美が帰ってからか?」
でも先生は大きな声を出していた。


「はい。多分その日の放課後です。『今度は誰が死ぬんだろう?』って始めたんです」
俺は苦笑しながら、又内助話を始めた。




 「ねえ磐城君。私達怖くて言えなかったのに、良く解ったね」

一人が言った。


「ん? 何の話?」


「ほら、さっき磐城君の言ったキューピット様よ」


「だって、磐城君彼処に居なかった訳だし……」


「あの後、私達話してたのよ。もしかしたら、あのキューピット様が原因じゃないのかって」


「だから怖くては言えなかったの」


「そうよ。だから……例えば誰かに聞いたとか?」
もう一人が言った。


「チゲーよ。でもそうなのかもな」


「何だいそりゃー」
先生も言った。


「実は……みずほに聞いたんだ」

俺がそう言った途端、みんな顔を見合わせた。




 「実は俺、霊感が強いんだ」

俺はもう一度、コンパクトをポケットの中で握り締めた。


「俺とみずほの出逢いはデパートのトイレだった」

俺はあの日の記憶は全く無いに等しい。
でもお祖母ちゃんから聞いた話を頼りに切り出した。


トイレの中で怖い思いをしたこと。
それがキッカケでトイレに行けなくなり、オムツを付けたこと。
保育園でみずほに睨まれ、怖い女の子だと思ったこと。
その時、実はみずほを傷付けていたこと。
それがきっかけでみずほに嫌われたこと。
そして、その全てが運命だったことなどを包み隠さず話した。




 俺はみずほへの愛をみんなに告白していた。


「其処まで好きだったとはね」


「そうだよね。だから千穂がヤキモチを焼いてたのか」


(えっ!?)
初耳だった。


(まさか……千穂が俺のことを?)

俺は何が何だか解らなくなった。


「あっ、ごめん。磐城君気付いていなかったのね」


「そうかもね。千穂おとなしかったからね」


(千穂がみずほを殺したのか? 俺をみずほから奪うために? でもそうなると……やはりみずほは俺が基で殺されたことになる)

俺は自分の考えが恐ろしくなり、皆が帰ってしまった屋上のドアを見つめていた。




< 40 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop