私のエース
 その翌日。
松尾有美は、半ば強引に連れ出されていた。


百合子と千穂は、三連続死のゲームを完成させようと躍起になっていたようだ。
俺がその事実を知ったのは、有美が連れ出された後だった。




 俺は職員室に急いだ。
でも担任は何処にも居なかった。


(ヤバい! 有美まで墜とされたら俺……生きていけないよ。先生、みずほに何て言えばいいんだ。結局……有美はお荷物だってことか!?)

思考回路は絶不調。
俺は仕方なく一人で屋上へ向かった。




 俺は約束通り、屋上に続く扉の前に張り付いて聞き耳をたてた。


『おかしいわね。何故みんな来ないの?』
百合子が言い出す。


『用事でもあるんじゃないの』
千穂も言う。


『みんなが来ないと私達帰れないじゃない。千穂本当にみんなに言ったの?』


『当たり前よ。ちゃんと言ったわよ!!』


『それじゃー、何故来ないの?』

百合子は少しイライラしているようだった。


(やっぱりこの二人は、みずほが堕ちた時居なかった他人に殺しを任せて、自分を保護したのか?)

俺は又怒りに震えた。


百合子はきっとクラスメートを焚き付けて完全犯罪を狙ったのだ。


『昨日キューピット様を遣ったら、アンタが死ぬと出たの。だからアンタは死ななきゃいけない。さっさと此処から飛び降りて』

そして業を煮やした百合子は到頭言い出した。


有美がどんなにも心細いか知りながら俺は出て行けなかった。




 その時。
コンパクトが急に力を帯びた。
俺は慌ててコンパクトをポケットから取り出した。


それには怒りに満ち溢れていた。


コンパクトが勝手に開き《死ね》の文字が揺らぐ。

そして……
何かが其処から飛び出してきた。


(ヤバい! ヤバ過ぎる!! 一体これから何が始まりんだ!!)

俺は度肝を抜かれて、その場にへたり込んだ。




 現れたのはキューピット様とは似ても似つかない邪悪の塊だった。
そのパワーに俺は圧倒的されていた。


キューピット様か何様かは知らないが、こんな者にみずほが狙われだのだとしたら……
太刀打ち出来るはずはなかったのだ。




 邪悪な者は百合子がキューピッド様をやった時に呼び出されたのだ。
でも百合子は自分の意志だけで《いわきみずほ》と書いた。
でも邪悪な者は本当は《まちだゆりこ》と書きたかったはずなのだ。


だからその仕返しをしたくて百合子に取り憑いたのだ。




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