私のエース
 百合子は参加した全員が握った鉛筆で、さもそれがキューピッド様の意思のようにみせかけと《いわきみずほ》とかいたのだ。

俺でも、みずほでも良かったのだ。

俺が死ねば翔太はずっとレギュラーだ。
でもみずほなら、クラスメートを焚き付ければ自殺にもっていける。

そう踏んだのだ。




 俺はもう一度鏡を見つめた。
みずほの霊が見せてくれたあの日が其処にあった。


みずほが《死ね》の文字を見つめる。

顔が見えない……
でもきっと青白く……
俺はその時。
警察車両の窓ガラスに映し出された自分の顔と重ねていた。




 俺がみずほに狂ったように、百合子も翔太に夢中になった。
愛して欲しくて何でも願いを聞いた。
でも、橋本翔太のためなら人を殺しても構わないのか?




 《岩城みずほが飛び降り自殺する》その情報がみずほのクラスに錯綜する。
すると、クラスメートが浮き足立った。


友達なんて上辺だけだった。
だからそんな心理に百合子はつけ込んだのだった。




 『自殺するなら早くしろ!!』


『そうだ。俺達は暇じゃないんだ』
心ない野次が飛ぶ。
そんな中、みずほは携帯を手に取る。
俺に助けて欲しくて……


それを百合子が取り上げる。
でも百合子は気付かなかったのだ。
みずほがリダイアルで俺に掛けていたことを。




 『誰か、誰か助けてー!!』

みずほが叫ぶ。
でも誰も助けてはくれなかった。


もう一度みずほは救いの手を求めた。


『助けてーー!!』

みずほが叫んだ時、偶然に俺に着信したのだ。

誰一人助けてくれなかった。
みんな傍観者だったから。
いや違う。
百合子の手がみずほの携帯を手にした時に、その邪悪な者は百合子を落とそうとしたのだ。




 松尾有美に向かって、百合子が近付く。
俺はたまりかねてみんなの前に出て行った。


先生のいない今、有美を守ってやれるのは自分一人だけだった。
俺は覚悟を決めていた。


既にキューピッド様で《いわきみずほ》と出ているのだ。
《まつおゆみ》の代わりに俺が墜ちるても、問題はない。


「な、何なの!?」
百合子が慌てる。


「磐城君……何時から其処に居たの……?」
青ざめながら千穂が言う。


「俺は何もかも知っているんだ。二人がみずほを殺したことも」


「何言ってるの!? みずほは自殺じゃない!」
百合子が噛みついた。


俺は録音機のスイッチを押した。




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