Versprechung
一緒にいようね、どこまでも
泣きじゃくりながら起き上がる。
怖い夢だったからじゃない。
悲しい、悲しい夢だったのだ。
次から次へと涙が零れ落ちる。
嗚咽が溢れ出す。
口元に手を当てて、
泣いていることがあの子に気付かれていないか、教会中を見回した。
あの子は自分とは遠く離れた机に頭を埋めていた。
ほっとして、胸を撫で下ろす。
これ以上あの子……リラを不安な気持ちにさせてはならない。
リラを守れるのは僕しかいないんだから。


命が宿った時__………僕は僅かな差だが、リラより先にこの場所にいた。
その頃の教会の中は、こんな生々しい赤色ではなくて、
白が映える美しい本物の教会だった。
でもリラが現れて数分経った頃に世界は急変した。
窓から見える箱庭の花は一瞬に枯れた。
光に満ちた庭の柵の向こうは、荒廃していった。
その時僕だけに女神の声が届いたんだ。

『あなたたちはもういらない』って

リラが意識を持ち出すようになるまで、僕はこの世界の心理というものを必死になって考えた。
そして分かってしまった。
僕らのような存在が知ってはならないこと。
女神に呪われていることを。

女神に声を聞かせる為に、何度も礼拝した。
この呪いを解くように説得しようとした。
本来ならばなくなっていただろう、この命を延命させることには成功したが、更なる不幸が降りかかろうとしている。
毒による衰弱だ。
女神の出される食事には毒が入り交じっている。その蓄積で、体が蝕まれているのだ。
一日で起きている時間は日に日に短くなっている。気分も優れることはない。
吐き気と頭痛を催し、最近は胸の辺りが強く痛むようになった。
きっとそれはリラも同じ。
何もないように振る舞っているが、彼女はもう日を飛ばしてでしか起き上がることが出来なくなった。

彼女を絶対に死なせてはならない。
たとえどんな不幸があるとしても、彼女だけには救いがあってほしい。
たとえこの命を犠牲にしてでも、彼女をこの教会から開放する。

リラ、すまない。

お前がどれだけ拒絶しようとも、僕はお前に命を分け与える。
二人揃ってではきっと生きることができないからだ。

見えるだろう、箱庭の先の景色が。
実は、あの外に広がるのは地獄じゃないんだ。


俺はお前に生き伸びて、あの幸せを見てほしいんだよ。
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