アオゾラをカナデヨ


練習が終わりソワソワしながら支度をして廊下へ出ると、もう安斉くんは待っていた。

「行こっか」

偶然ではなくこうして一緒に帰るのは初めてだ。

「よく降るな……」雨の落ちるグレーの空を見上げながらキレイな青い傘をさす安斉くん。

「そういえば、初めて会った時も空色のパーカー着てたよね」

あの時あの駅で私たちが出会わなければ、私は安斉くんに恋をすることはなかったかもしれない。

「そうだったか?よく覚えてるな!」

「うん、キレイな空色だなって思ったから」

私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれているのが分かる。そんな些細なことが嬉しい。

「本当に梅雨明けるのか?」

「うん、もうすぐだと思うよ」

「こんなに降るとは思わなかったよ。母ちゃんも洗濯がぁ!て困ってる」

「あはは、うちもだよ」

安斉くんは北海道から来たから、初めての梅雨を体験しているんだ。

照れくさいのか、よく喋り楽しませてくれる。

ーー雨も悪くないな……。
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