焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
再び元の位置に戻って来ると、勇希は不機嫌な表情を隠さずにどっかりと床に座り込む。


「……つか、何? 『いい加減にして』って。いい加減も何も、なんの加減だよ」


そして、テーブルの上に置いたスプーンを手に取って、ちょっと重そうにクルクル指で回す。
左手で頬杖をついて、斜めの角度から私を見上げる呆れ果てた瞳が、私の怒りに油を注ぐ。


「もう、食べなくていい」


テーブルに両手を突いて勢いよく立ち上がってから、勇希の前に置いたお皿を持ち上げた。


「あ、おい」


追いかけて来る声を背にキッチンに向かって、潰れたジャガイモが無残な、半分以上残ったカレーを三角コーナーに捨てた。


「ちょっ、智美っ……」


背後から伸びた勇希の手をパシッと振り払ってから、私は蛇口を捻って勢いよく水を出した。
スポンジに洗剤をつけて、そのまま食器を洗い始める。


「……お前なあ……。食べ物粗末にするなよ」

「勇希に人のこと言えるの!? イモが崩れるほど煮込んでないのに、こんなにしたのは勇希じゃない!!」


そう怒鳴りながら振り返ると、すぐ真後ろに立っていた勇希の顔が視界に飛び込んでくる。


私より十五センチ高い身長。
少し癖のあるサラッとした髪が、目元にちょっとだけかかっている。
通った鼻筋。薄い血色のいい唇。
勇希はとても整った顔立ちをしていて、どのパーツをとっても、いちいち私好みだ。
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