焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
そして、一番好きなクリッとした目はほんの少し細められて、今、三角コーナーに注ぎ込まれている。


「……あ~……」


私が言いたいところを察したのか、勇希も声を尻すぼめた。


それが当然の反応だ。
三角コーナーに捨てられたカレーは、キーマカレーじゃないのに、全てが押し潰されていて、ほとんど原型がわからない状態になっているのだから。


「……ごめん。無意識」

「だからもっと腹立つのよっ」


短い謝罪を呟いた唇を大きな右手で隠す勇希の胸を、私は泡のついた手で強く押した。
うっと短いうめき声を上げる彼を無視して、再びクルッと背を向ける。


「智美。……悪かったって」


少しだけ殊勝な声で謝る勇希に、私は無言のまま。
ただ食器を洗うことに専念する。


「~~だってさ。仕方ないだろ!? 正直『あ~、またカレーか』って思ったし。っつーか俺、ここんとこ仕事立て込んでて、社食の営業時間ギリギリに駆け込んで食ってるから、昼もいつ行っても残ってるカレーが続いてるわけで……」

「それは私のせいじゃない」

「まあ、そうだけどさ。……けど、智美だって同じ会社なんだからわかるだろうがっ! 今俺がどれだけ忙しいかって!」


勇希と同じように一日の仕事を終えて帰った来た私が作った夕食のカレーを、ここまで丹念に潰し捲りながら食べていた言い訳をしながら、勇希も勢い付いたのか。
声が段々と険しくなっていくのがわかる。
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