焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
「千川君が勇希を佳代の部屋まで連れて来てくれたの。そのままにしとくわけにいかないし、結局私がここに連れて来るしかなくて。……すぐ出て行くつもりだったのに、疲れてちょっと休憩のつもりが、今まで眠っちゃっただけで」


つまり、今こうして俺と向き合ってるのは、とても不本意だってことか。
俺は軽く苛立ちながら浅い息を吐いた。


「……眠ってくれて良かった」

「ついでだから、荷物も持って行く。すぐに出て行くから」


智美は俺から目を背けたままで、床に手をついて立ち上がろうとする。


「ちょっ……待てって!」


その腕を、俺はとっさに掴んでいた。


智美が小さく息をのむ。
そんな様子にもどかしい気分になりながら、俺は智美に頭を下げた。


「……ごめんっ!!」


逃がすまいと智美の腕を掴んだ手に、力が籠ってしまう。


「智美の気が済むまで、何度でも謝る。お前に任せっきりにしてた家のことも、ちゃんと全部俺がやる。だからさ。……別れるとか、言うなよ」


必死になって言ってるつもりなのに、どうにも気恥ずかしい。
だけど、照れてる場合じゃない。
これ以上言うべき言葉があるならば、教えてくれればなんでも言える。
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